離婚小説について

朝倉かすみさんの『幸福な日々があります』は、
46歳のヒロイン森子が結婚10年目に思う、
夫婦や自立、移ろいゆく愛や時間をテーマに描いた
すばらしい「離婚小説」なのだが、
「離婚小説」について朝倉さんにインタビューしたとき、
同じく離婚小説として2冊が頭にあったという。
ひとつは、田辺聖子さんの『私的生活』、
もう一つは枡野浩一さんの『結婚失格』だ。
以前、『結婚失格』を読んだときには、主人公の速水、
つまり妻・香から一方的に離婚を言い渡される夫の視点を、
ずいぶん言い訳がましいと思ったし、
「何の落ち度もない自分」的な言い方に、かなり反発も感じていた。
だが、現実に強引に離婚を切り出された身に、自分がなってみたら、
主人公の無念さがよくわかる気がしてきた。
別れはつらい。別れなくちゃいけないこともあるんだけど。